牛の受精がすごい!牧場行って来たよ。

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ちはるの森には、アップしそびれて
お蔵入りになっている記事がいくつかあります。

昨日発見した、千葉にいたときの記事(一年くらい前)が
なかなかの力作だったので、せっかくなので公開しちゃいます。

今回は、牛のお話やでー。

 

///////////////

 

こないだご近所にある循環型酪農を行う「高秀牧場」に行ってきたよ!

最近はお肉あまり食べられなくなって
牛を食べることはめったにないのだけれど
前に書いた「いのちをどこで区切る?」のモヤモヤがあって
興味津々なのでいってきた。

もちろん、気になる屠殺についてもおはなし聞いてきたよ。

オーナーの高橋さんが「そんなこと聞いてきた人初めてだよ!」と驚くくらい
かなーりつっこんで体験してきたので、お楽しみに。
(一番盛り上がった話は「採卵/受精について」です…うふ★)

 

私自身も知らないこといっぱいで面白い体験になったので、
ぜひともシェアしたいと思います。

まず。

 

こちらが高橋さん自慢の牛さんたち。
きゃーかわいい!

 

…と思ったのもつかの間、さっきのは子牛だったようです。

 

でっっっか!!!
これ倒れてきたら私圧死してしまうよ…

 

 

私がオーストラリアやラダックでお世話した牛さんは
ジャージー牛だったからもっと小さかったの…びっくりした。

この子は牛の品評会で千葉No1になった牛「チャップリン」。
全国1位になったこともあるんだとか。

 

 

この子は、昨日生まれたばかり。
だけど、50キロもあるんだって。牛でっかい…

 

そして、乳搾り、ミルキング(ミルクを絞る機会を設置すること)も体験させてもらうことに。

 

乳搾り。
程よい体温が心地良い…きもちいい。

 

 

ちなみに、こちらがミルキングの機械。
装着の体験までさせてもらった。

 

 

この機械はうまくできていて、
ずーっと吸い続けるのではなく、
弁があって、一定の間隔で吸うのをやめる。

ちょうど、赤ちゃんがミルクを吸うような感覚になっているんだって。
きゅーっぽん、きゅーっぽん、てリズム良く吸う感じ。

なるほどー。

指を入れさせてもらったけど、まさに!って感じだった。
(吸引力強すぎて指真っ赤になったけどね!)

 

 

こんな感じで、上に吸い込まれていきます。

 

 

最後にお乳を消毒して終了。
(この緑の液体が幕になって、雑菌が入るのをおさえるんだとか)

 

 

しかし、ここの牛さんはみんなミルクを出す機械を装着してるのでみんなメスっぽい。

「オスはどこにいるんですか?」
と聞いて、案内されたのがこちら。

 

 

 

えっ。

 

 

「この中にオスがいるんですよー」

 

えっ。このちっさい入れ物に?

 

「この牧場にいる牛は、100%メスです。オスはこの中に入ってる精子だけなんだよ」

 

精子…!?

 

「中で冷凍してるからねー、写真取るなら一瞬でね。とけちゃうから」

と言われて一瞬で撮ったのがこちら。

 

 

この牧場のオスだそうです。

 

「オスはでっかいし、飼うのが大変なんだよ。
オスが暴れて死んでしまう農家さんだっているんだよ」とのこと。

 

へえええーーーーーえええええーーーー。
ええええーーーー。

 

びっくり。

 

確かに、メスだけでも命の危険感じるくらいの大きさだもんなぁ。。

 

「精子はねー、このカタログから買うんだよ」

 

 

えええーー!

「ほら、この子がどの親から生まれて、どの品評会で賞をとって…って全部書いてある」

ほんとだ…。

 

牛の体格や体重はもちろん、
生まれる子どものお乳の大きさや位置、形についても事細かに書かれている…!

そんな…小さくてもお乳はお乳ですよ!!泣
という個人的な気持ちを抑えながらカタログに目を通す。

この情報をもとに、精子を選んで買うのだそう。
気になる価格は500円~10万円までピンキリ。
ちょうど、精子を売る業者さんが北海道から来ていたので、お話を伺ってみた。

「オスを買ってきて育てて、精子を売っています。
このあたりの牧場を回って買ってもらっているんですよ。
価格はその時々ですね。あんまり高すぎてもみなさん買ってくれないので」

 

ほうーーーーーーーーーーー。

 

精子を売る人なんて、いるんだ。
ぜんっぜん知らなかった。

 

じゃあ、卵子は…?

卵子も精子と同じ場所に保管されていました。
これまた一瞬を逃さないようにしっかりと激写。

 

 

卵子を採取するためには、ホルモン注射で卵子を増殖させる注射をするのだそう。
そこで、普段なら1回の発情で1個しか作られない卵子を
10個くらいに増殖させるんだって。

 

へえーー。

 

そしてその卵子を取り出すことを採卵といいます。
その採卵がすごい。

 

どわああああああ!

 

 

お尻から手を突っ込み、腸から子宮をがっしとつかみ
子宮の位置を調整しながら、子宮に棒を入れる。
(いてててて!)

 

で、洗浄液を流し込み、卵子を流しだします。
取り出した卵子は発情が来そうな牛に入れ、
発情期が来たら精子を入れ、人工授精します。

取り出した卵子。

 

 

基本的に卵子を増殖させて採卵する雌牛は、牧場の中でも質の良い牛。
この優秀な種を残すため、採卵を続けます。

 

すんごい…。
酪農超ハイテク。
酪農って、こんなに人工的で管理されてるものなんだね…。

 

みんな放牧されて、のびのび育ってるもんなんだとのんきに考えてた。

知らなくてビックリしたけど
どうやらこのホルモン注射は酪農業界では普通みたい。
牛でビジネスをしていくためには必要なことなんだろうね。

 

こういう現場を見ると複雑な気持ちになるけれど
今の消費システムの中で安定した食糧を供給しようとすれば、
「効率」を求めなければまわせないのは当然のこと。

 

もっともっと自然に近い状態でお肉が食べたいのであれば、
自分の消費スタイルから見直していかないとね。
今のまま、安価で大量にお肉が必要になっていったら
きっとこういう種類の「管理」はどんどん増えていくんじゃないかなー。

 

そして、糞尿はどこへ行くのかと思いきや、
流れた糞はベルトコンベアへのせられてこちらの建物内へ。

 

(酪農女子、あいこさんと。)

ここでは、牧場と一緒に畑をやっているので、
牛の糞を分解して肥料にしているのです。

 

そして、尿はこちらのでっかい池にためられ、
液肥(液体状の肥料)としてまたまた畑にまかれるんだそう。

 

 

くんくん。
思わず嗅いでみるわたし。

 

 

お…?

思ったよりも、臭くなーーーーい!

ほうほう。
酪農では大きな問題となっている糞尿も、
ここでは無駄にはなってないんですね。

実は、この牧場を訪問したのには、一般的に言われている
「牛は環境に悪い」ってほんとなんだろうか?という気持ちもあった私。
失礼を承知で、こっそりと高橋さんに聞いてみた。

「そうだね。 確かに海外の安い穀物を大量に輸入して、
じゃんじゃん牛を育てていたら糞尿はこんな風に処理できないし
問題になるだろうね。大規模にしようとしたら循環型酪農は難しいよ。
みんな大きくしたがるから失敗するんだ」

と高橋さん。

 

確かにそうかもしれない。
高橋さんのところは、牛の餌も全部自分たちで育てているから、
ちゃんとした「自然の循環」が自分のところでできている。

バランスの良い適切な大きさって何にでもあるよね。
大きいことが素晴らしいって、もう古いのかもしれないなーと思った。

 

そして、酪農と農業を一緒にやっているこの牧場では、菜の花を育てています。
牛ちゃんの栄養をぐんぐんと吸い込んで育った栄養満点の菜の花は、
そのままかぶりついてもものすごく美味しい!

 

 

とっても興味深かったのが
「農業やるようになってから酪農がうまくいくようになったんだよ」
という高橋さんの言葉。

農業では、栄養や農薬をやりすぎると健康な野菜がちゃんと育たない。
自分で根をはり、虫と戦う力がなくなってしまうから。

牛も同じで、まったく発情が来なかった牛に、
一定期間餌をやらないなどの飢餓状態を作り出す。
そうすると、「種を残さなければ!」という想いが芽生えるのか
次の発情は必ずうまくいくんだとか。

そして、基本的には餌もやりすぎないこと。

餌を大量にあげれば大きな牛が育つけれど、
その分だけきちんと消化されない臭い糞尿が出て、処理も大変だし量もすごい。
もちろん大量の餌も必要になる。

 

なーるほどねえ。

高橋さんは、「これは人間にもいえるんじゃないかな」っていってた。
そうかもしれないなあ…。

私たち人間も、「食べ過ぎてる」ことってあるんじゃないかな。
ちゃんと自分が必要な分だけ食べてる?
なんだか、いろいろ考えちゃうね。

 

//////////////////////////

 

さて。ここの牛さんは通常乳牛として育てられ、
お乳を搾ってそこからミルクやバターなどを作ります。

病気や怪我でミルクが出せなくなってしまった場合や
年を取ってミルクが出なくなったら屠畜場に送られてお肉となります。

今、牛の市場はというと
子牛は2-7、8万円で仕入れて、2年間育てて35-45万円で売られる。
和牛は、30円万で仕入れて出荷まで3年半くらい育てて100万円くらいで売れるけど
景気が悪い&海外から安い肉が入ってきてるから、良い肉は売れない。
値段がどんどん下がってきているんだそうです。

2年間育てて、30万円じゃあ元が取れない。
採算が合わないので、今の酪農は国から補助金が出ていて成り立っているんだとか。

高橋さんは今の酪農についてこう語ります。

 


※ちなみに手に持っているのは卵子を採取する棒w

 

●今の酪農・農業業界は?

「日本の酪農の規模拡大が進んだのは
外国の餌を大量に輸入してたべさせられるようになったから。
でも、今はすごい海外の餌の値段が上がってしまっているんだよね。
燃料が上がって、運賃が上がって…下がる気配が無い。

結局、自分のところで餌を作れないと翻弄されちゃう。
外に依存してしまうと自立できなくなってしまうんだよね。

俺はバブルの時代に酪農をはじめたから、
すごくうまくいって、こんなに酪農って儲かるのか!と思ったけど
バブルがはじけて、牛肉の自由化が始まって
輸入の牛肉が入ってくるようになってから激変したね。

日本の農業とか酪農とか、輸入のものが入ってくる前は
ほんとうまく回ってたんだよ。
餌も自分たちで作って、牛に食べさせて。
だからこそ、そんなに規模拡大できなかったんだけどね。
そのかわり、自分たちで餌を確保できているすごい足腰の強い酪農をやってたんだ。

でも輸入物が入ってきてからは、
規模拡大のために一気に1000頭とか搾乳にしてしまって
輸入でじゃんじゃん穀物食べさせてさ。
輸入ストップしたらそういうところは間違いなくつぶれてしまうんだよね。

輸入ものに翻弄されてるっていうのが今の農業と酪農の現状だよね。」

 

●牛の屠蓄ってどうですか?

「20年近く前だけどね、気に入ってた牛が怪我をしてしまって
屠蓄場に送らなくちゃいけないときがあった。
そのときはまだハンマーで、目の前で牛が殴られて。
急所をはずすと暴れて大変なんだよ。
一度外れると悟ってしまって逃げ出してしまうから、命がけだよね」

愛情込めて育てた牛を屠蓄場に送るとき、
どんな気持ちなんですか?と聞いたら

ちょっと考えながらもこう答えてくれた。

「うーん、ペットじゃないからね。その気持ちは割り切ってるよ。

でも、病気で屠場に行くことになったらそれは自分の蓄主の落ち度だから、
受け止めて深ーく反省して、二度と病気や事故が起きないように、と
自分を戒めるためにも屠蓄場に行って最後まで見守るよ。」と高橋さん。

牛の屠蓄で衝撃的なのが、牛の頭に空気砲を打ち込んで、
その穴から棒を差し込み、脳みそをかきまぜ、
そのまま棒を突き通して脊髄を破壊するというところ。

牛が死んでいたとしても、筋肉の反射で
勝手に腕や足が動いてしまうことがあるそうなので、
そういったことを防ぐために行っているのだとか。
(※BSEの問題で今はできないみたいだけど。)

「頭に棒を差し込んだ瞬間、衝撃で牛が宙に浮くんだよ。
900キロの牛が。それでそのままバターンって倒れて。すごい迫力だよね。
でも、普通、酪農やってて屠蓄まで見ている人はあんまりいないと思うよ。

牛を送り出すときは、今までありがとうという感謝の気持ちをいつも持ってる。
その牛のおかげで僕らは暮らしているわけだから、
365日感謝の気持ちは忘れたことは無いよ。
経済動物として割り切ってはいるけど、うちに生まれた牛たちは
ああこの牧場に生まれて来てよかったと思ってもらえるように
愛情こめて世話してるよ。」

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●農業・酪農の役割とは?

「農業の果たす役割って、食糧を作るだけじゃなくて
自然環境を整えて守る、食育っていう意味でも大切だと思うんだよね。
でも、生産性が悪くなっていって効率が良くないから
どんどんやめてっちゃうんだよね…。

もうね、そんな大金手に入れなくても、生活していけて
自分が楽しければいいんじゃないかなって思うよ。
大金持ちは寂しいと思うよ俺は。(笑)

でね、食べ物だけは絶対に外国に依存しちゃいけないよ。
災害があったり戦争があったり、何かあったら本当に生きていけないからね。
国民全体が「自分の食糧は自分たちで作る」という
強い信念をもってほしいなあと思うよね。」

 

私も超同感です!

ふと思い出した。
私がラダックの小さな村で感じたこと。
「効率の良くない伝統的な文化からどんどん消えていってる」ってこと。

でも、本当は一見効率の悪そうなことが、
人間の暮らしと自然を結び付けてくれていたというか、
バランスをとってくれていたもので。
長い目で見れば、本当はかなり効率の良いことだったりする。
だからこそ、何に依存することなく
自分の足で立つ暮らしを作っていけていたのだと思う。

今はみんな、目先のことばっかりだなー。

 

いつかは、きちんと屠蓄場の見学もしてみたいな。

しかし、牛のことを話す高橋さんはイキイキしてて素敵だったな。
牛が大好きなのがよーく伝わってきた。

特に、品評会の牛のカタログを見て
「いやーこの牛の背中のこのラインがいいんだよ!」と惚れ惚れお話してくれたときなんて
まるでアイドルの写真集を見てるかのような表情でしたよ。

 

 

男のロマンをくすぐる何かがあるんでしょうねー。ふふ。

 

このあと、最後にここの牛からとれた
生クリームをぶんぶん振り回してバター作ってきた!

 

 

じゃーん

 

 

手作りパンに塗っていただきました。
ミルクも頂いて、おいしかったよー!

そして、最後は菜の花のパッキングをお手伝いしたら、
9キロの菜の花を頂いちゃいました!

また遊びにいきたいなぁ。

 

そして。
この日は3・11。

大震災が起きた時間に牧場のスタッフの方が走って知らせに来てくれて
サイレンが鳴る中、みんなで黙祷した。

黙祷が終わった後、
あの時の恐怖とか絶望とか決意とかを、色々思い出した。

あれから一年。
これからも自分が作りたい暮らしに向かって、
少しずつでも進んでいきたいな。

about me!!

About chiharuh

twitter: @chiharuh facebook: http://www.facebook.com/chiharuh   ●畠山千春   新米猟師兼ライター   法政大学人間環境学部卒業。カナダ留学後NGO/NPO支援・映画配給会社に就職、3.11をきっかけに「自分の暮らしを作る」活動をスタート。  2011年から動物の解体を学び鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得。  現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る「いとしまシェアハウス」を運営。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。TEDxTokyoyz、TEDxKagoshimaにて登壇。   ブログ:ちはるの森 http://chiharuh.jp   著書:『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎) http://urx.mobi/B8LE

4 Comments

  1. 三好加奈子

    いいブログですね。
    すばらしい記事です。
    感動しました。
    精神性や実用性の問題で、
    輸入をやめた方が幸せになるんだなって思いました。
    しかし、輸出で外貨を稼いで日本が成り立っているため、
    むづかしい問題ですね。。。

  2. 藤井浩一

    堀田さんの牛のと殺記事分かりやすかったです。私達も「自分の暮らしあ」自分でつくる」を基本にしている、任意団体「楽庵楽塾」で夢を語り、夢を実現する町中ギャラリーで勉強させてもらっています。シエアハウスづくり共感します。

  3. 城生長孝

    初めまして、兄がちはるさんの記事をfacebookでいいね!していたので初めてちはるさんの記事を読ませていただきました。
    僕自身知り合いの牧場で小さいころから仕事を手伝わせていただく機会が多くあり、毎年小中学校の長期休業中に一人で牧場までいって仕事を手伝わせていただいてました。
    小学4年の時には屠畜場に連れて行ってもらって、その時の屠畜場の様子は今でもまったく忘れていません。とても衝撃的だったので
    でもそのあとから酪農に関われる仕事をしたいと思い、いまは獣医を目指して勉強しています
    小さいころから命というものに対する酪農家の方たちの思いを聞いていて、最近よく言われる食育というものはいくら本を読んでも心の底からは理解しがたいものだと思います
    実際に命に触れているからこそ仕事と割り切りながらも誰よりも動物を愛して生活を送れているんだと思います
    こういった記事があるのは少しでも命に対して考える機会を設ける助けにとてもなっていると思いました
    頑張ってください
    長々とすみません

  4. Pingback: 2013年総まとめ!&初獲物ご報告 | ちはるの森

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